学生へのメッセージ
地震の科学の現状,特に東日本大震災におけるその限界を解説しながら,科学の世界から発信される地震の情報をいかにとらえるべきかについて議論する.
参考文献
・大木聖子・纐纈一起,「超巨大地震に迫る」,NHK出版,2011.
・上大岡トメ・上大岡アネ,「生き延びるための地震学入門」,幻冬舎,2011.
・藤井敏嗣・纐纈一起(編),「地震・津波と火山の事典」,丸善,2008.
履修者のコメント
◇工学部・システム創成学科3年
理学の権威である纐纈先生が自ら科学の限界を語ることそのものに価値があると思った。ただ、最終的に地震のリスクは国民一人一人が判断すべき、というのはやや投げやりな感があるのではないかと思う。
●先生からの回答
講義中にも同じような質問がありました。それに対して答えたことをもってこのコメントへの回答としたいと思います。私は科学者として「これは100%安全、これは100%危険」と言えたらどんなにいいかと思うし、それに向かって大変な努力をしているとの自負もあります。しかし、それがどうしてもできない科学の現状においては、その科学の限界を知ってもらうことの方が科学者の正しい責任の取り方だと考えています。
◇文学部・社会学3年
国民の意識の変革まで、科学者はコミットすべきではないだろうか。全国的に科学リテラシーについての教育を施していくことの必要性が強調されるべきだ。地震の予知に限らず放射線にも関わる話だが、統計やそれに基づく予測などに向き合う姿勢がまだ未熟なのではないか。
◇文学部・倫理学3年
地震の予知について、イタリアでは予知が出来なかった科学者に対してペナルティを与えたとのことだが、この対応には疑問がある。首都圏直下型地震の予測が出ても被害拡大の予防の動きが消極的で、結局未だ首脳陣等も危機意識が足りないのだと思う。人間は無意識のうちの希望によって、予知を出す側も受け取る側も過小評価するもの、というのをあらかじめ織り込んでおかなければならないと思う。
◇法学部・公法コース4年
『科学教育ではなく科学リテラシー教育を』と主張され、科学の限界についてまとめて下さったことは、この朝日講座全体に通じるメッセージだと感じるとともに(以前の児玉先生の講義レスポンスの引用を用意されていたことが印象的でした)、その中で『科学の限界を主張する限界』についても言及されたことが、この講義を深めたと思います。