この講義では、日本国憲法の解釈ではなく、憲法の背後にある(かも知れない)いくつかの考え方の筋道についてお話します。カント、ベンサム、アリストテレス等が登場する予定です。
・長谷部恭男『法とは何か』河出書房新社、2011年。
・長谷部恭男『憲法入門』羽鳥書店、2010年。
・アラステア・マッキンタイア『美徳なき時代』篠崎榮訳、みすず書房、1993年。
◇工学系研究科技術経営戦略学・修士1年
憲法は普段のわれわれの日常生活ではあまり意識しない。ところが、幸福という概念に限らず、少なくとも憲法は我々の生活を保障している大切な知の体系である。今回の講義を、これからの生活において憲法というものを考えるきっかけとしたい。
◇文学部行動文化学科社会学・3年
私は憲法を、価値観を共有することによって皆の幸福をできる限り同じにするように努力し、平等な社会の実現を目指すものであると考えるのである。ところがやはり、憲法の目指す価値観の共有には限界があるし、だとすれば真の平等な社会というものは実現できない。その中で、いかに皆が幸福になれるようバランスをとっていくのかが、憲法に求められていることではないのだろうか。
◇文学部歴史文化学科西洋史学・3年
例えば環境問題のように、各自が良い、許されていたことが、集まって公共の福祉に反する事態が起こる。憲法や法はこれを防ぐことができるのか。単純に憲法や法を変えればいいという話ではないと思う。どうも「選好」というと、個人主義的な匂いを私は感じてしまうのであるが、「公共の福祉に反しない限り」での選好ではなく、「公共の福祉に貢献する」選好をしようとする、そのような文化を憲法は作れないのであろうか。
(以上)