第9回 

 トム・ガリー (東京大学大学院総合文化研究科 辞書学/言語教育)

「幸福の言葉、幸福な言葉、幸福という言葉」

 

幸福の意味を考える前に「幸福」という言葉の意味を考えましょう。 

 

 

 

参考文献

複数の国語辞書から「幸福」の定義、複数の英英辞書から「happy」または「happiness」の定義をコピーして12月3日に持ってきてください。

 

 

 

 

講義後情報コーナー

履修者のレスポンス抜粋

◇法学部第二類 3年

満ち足りていない不満がある状態であっても人を「幸福だ」と感じさせる要件は一体なんなのかというと、私は、それは「現在の状況に納得していること」ではないかと思います。現在の状況に不満があっても、未来においてそれを変えることができるのであれば人は現在その状況にあることに「納得」はするのではないかと感じます。 「納得感」は私が今までこの講座を受講し続けた結果、人が幸福を感じる上での一つのカギのではないかと思うようになった言葉です。まだはっきりとは整理できていないのですが、今後の講義を通じてもっと考えを深めていきたいと思います。

 

◇文学部 歴史文化学科 西洋史学 3年

幸福という言葉は、その言葉を使用する人、使用される文脈によって、その意味が違うのだ。そう考えると、「幸福」という言葉は非常に文学的なもので、科学とは相容れないような気がしてくる。以前までの講義は「幸福とはかくあるべし」のようなスタンスで進められてきたし、それなりの説得力もあったのであるが、なぜかそのように示された幸福に冷たい印象を受けてしまった。それはやはり、科学が個別性をあまり考えないからであろうか。

 

◇学際情報学府 人間情報学コース 修士1年

“幸福”は曖昧で主観的であり、定義するのは難しいという意見が多い中で、トム・ガリー先生が講義中におっしゃった「全員が満足する辞書を作るのは無理。だが、辞書は必要」という言葉が印象に残った。それではなぜ必要なのだろうかと考えた時に、辞書とは知の世界を進む上で“地図”の役割を負っているのではと考えた。書籍や論文という広大な知の世界を進むにあたって障害物となる“意味のわからない言葉”を、辞書で確認をし、文脈の中で判断する。こうしたプロセスの繰り返しで文章の中に“知っている場所=単語”が増え、文章(知の世界)への理解が進むのではと考えた。

 

(以上)