佐藤 健二(文学部 社会学)

「Mobile-Phone時代と他者認識の変容:メディアとしてのことば」



予習文献

・『ケータイ化する日本語――モバイル時代の”感じる””伝える””考える”』 佐藤健二(著)大修館書店(2012)


※履修者には書籍・論文を貸し出します。詳細は初回授業でお伝えします。

講義後情報コーナー

履修者のレスポンス抜粋

コミュニケーション手段の一つである会話に注目し、その媒体について論じた講義でしたが、電話がメディアであるということは強く意識したことがなかったので面白く伺いました。講義では携帯電話の電話機能に着目したお話が主でしたが、学生のグループワークでスマートフォンについて議論した際はSNSに論点が集中し、スマートフォンという一つの名前で呼ばれる機械がいかに多機能であって様々な文脈で影響を有しているかを感じました。(法学部4年)

 

テクノロジーの発展とそれがもたらす利便性と、言葉の力や他者との関係性の両立は、トレードオフとまではいかなくても、かなり意識的に実践しなければすぐに忘れ去られて利便性の方に流されてしまうと思います。これから、ことばの力について再考しながら発言していこうと思いました。(法学部4年)


これまでの講義で様々なものがメディアとして捉えられることを学んできた。しかし今回の講義でそれ以上の広がりに気付かされた。(……)第4回の松井先生が述べられていた、例えば言葉を媒介とした観点から共通点を見ることで人間社会を科学できるという姿勢と似たものを感じた。それには、さらに第5回の鈴木先生の講義で感じた、メディアが人を成長させる点も加えることができるだろう。これまでの11回分の講義を今の知見から改めて振り返りたくなるような、多くの知識を活かしたくなる気持ちにさせ、知的好奇心を掻き立てる機会となり、横断的な講義の意義を実感した。(文学部・社会学4年


以前から、疑問に思っていたことがある。もしもし、の存在だ。祖母の家の黒電話ならわかる。幼少期に自宅にあった電話機ならわかる。しかし、講義で扱った「ケータイ」には着信相手が表示される。もしもしは要らないではないか。そういったことを考えながら受講していたら、講義中にその話題が出て驚いた。(文学部・美術史学3年)


班での議論では、現在もっとも身近に感じているSNSがどのような影響をもつのかという点に集中して意見が出た。親密な空間をつくり、社会的な影響力はあまりないのではないかという話になったが、佐藤先生のお話にあったように、現在流行っているSNSというメディアをいま我々が考察することは、廃れていったメディアを振り返ることと比べると見えない部分が多く難しいと感じた。しかし、電話の話し言葉や手紙の書き言葉に立ち戻ってみても、今のスマートフォンをどのように論じることができるのかを考えるとかなり混乱してしまう。話したり書いたりすることでコミュニケーションをとるメディアであるだけでなく、インターネット空間にも接続しており、カメラ機能も、人工知能に似たような機能も持っているからかもしれない。新しいメディアということで、一昔前のケータイのように騒がれているだけで実際は大して状況を変えているわけではないという可能性もあるとは思うけれど、どうしても期待してしまう。(文学部・社会学3年)


直接会って会話することと、電話を通して会話すること、そして携帯電話で会話すること。この3つにおいて、他者との関係性が変化しているということを、この講義を通して初めて意識した。また、「ことばのやり取り」という日常的な現象に着目し、その特徴を掘り下げ、深く分析できるということに、学問の奥深さを感じた。(教育学部・教育実践政策学コース3年)


今回のテーマはこれまでの授業を総合した内容となっていた。貨幣や法など抽象的な媒体を介してコミュニケーションを行っていることをこれまで学んできたが、今回はより具体的に、私たちが「メディア」と考えているケータイを介したコミュニケーションを学ぶことができたように思う。(……)次回はさらに具体的な「メディア産業」がテーマとなっている。深層からメディアを考えてきたこの講座が事象としてのメディアの行動をどう捉えるのか、最終回を楽しみに待ちたい。(人文社会学研究科・文化資源学修士1


「スマホ」というメディアが何であるのかというのを特定するのは極めて難しいと思った。(……)佐藤健二先生は「ケータイ」というメディアの特性を、声-ことば-空間という側面から描いていたが、これは一つの方法であると思う。スマホでなされるコミュニケーションの空間が、声や言葉や文字といったものでいかに構成されるのかということを追いかけていくことが、スマホを通して行われていることを描写する有力なフレームワークになるのではないかと考えた。(学際情報学府・社会情報学コース修士1年)