國吉 康夫

(情報理工学系研究科 知能システム情報学)

「ロボットは心を持つか」


予習文献

  1. 浅田稔,國吉康夫,『ロボットインテリジェンス,岩波講座 ロボット学(4)』,岩波書店,2005年より、1章,7章,および可能な範囲で2章,6章.
  2. 國吉康夫「知的行動の発生原理, レクチャーシリーズ:「知能コンピューティングとその周辺」〔第7回〕」 『人工知能学会誌』, vol.23, no.2, pp.283-293, 2008年.
  3. 國吉康夫, 寒川新司, 塚原祐樹, 鈴木真介, 森裕紀「人間的身体性に基づく知能の発生原理解明への構成論的アプローチ」『日本ロボット学会誌』,vol.28, no.4,pp.415-434, 2010年.

講義後情報コーナー

履修者のレスポンス抜粋

◆國吉先生のお話を伺って、人間と似たような機能を備えたロボットを作る過程は、ロボット技術を進歩させるだけでなく、人間の機能への理解を深めるのだと分かりました。グループワークの際も、人間の心を持つロボットを作るためには「人間ならばどのような心を持っているべきか」を定義する必要があると感じました。ただ、このような定義を通じて正常で一般的な人間のあり方の基準を定めることは難しいため、ロボットは完全に人間と同じ心を持つことはできないと思います。結局のところ、人間と同じ性質を持つロボットを作ろうとしても、人間が人間の性質だと捉えた性質を持つロボットしか作ることができず、そこにロボット技術の進展の限界があるのではないかと考えました。逆に、人間が回路によって指示せずとも自発的に感情を持つロボットができれば人間の思考に依存していないと言えるはずなので、そのような技術の実現可能性が気になりました。(法学部・3年)

 

◆「心を持たないロボットの方が心を持つロボットよりもずっと脅威になり得る」という見解には賛同したい。グループワークでは『どうせロボットは人間と全く同じ心を持つことは出来ない』という意見もあったが、むしろ人間とは違うということが大切なのではないかと思う。お互いが異なっているからこそ、その違いを尊重し合えるのではないだろうか。全く均質な個体どうしの関係というのは実はかなり脆弱であって、お互いの特異な諸要素が相互に重なり合い織りなされる関係の方がずっと頑丈で長続きするようにも思える。将来、自律した心を持ったロボットが人間の心にどんな影響を与えるのかを是非見てみたくなった。(法学部・3年)

 

◆非常にわかりやすいかつおもしろいご説明で感銘を受けたとともに、いつまでもお話を伺っていたいと思う回だった。人の心について考えるとき、言葉を用いた抽象的なアプローチが中心の人文学とは異なり、人間の身体に近づけたシュミレーションモデルによる見方は新鮮だった。実際に人間の動きそっくりのロボットを見て、つい共感してしまった自分を省みるに、人文学的な思考を飛び越えて人間の心を感じてしまったようである。(法学部・3年)

 

AIというこれから生きて行く上で、誰もが関わるであろう重要な話題について知ることができ、とても有意義な時間だった。(……)人工知能が人の仕事を奪うという報道があるが、STAR WARSやドラエもんの世界ではロボットと人間は共存しているし、人間がそのような世界を描いている時点で、人間はAIと共存することを望んでいるのだろうし、そのような世界が理想的だからこそこれらの作品は多くの人を魅了したのだろう。人間は、AIを恐れるよりも、どう共存し共栄していくかを考えるべきであり、それこそが、命に限りある人間だからこそできることだと思う。(法学部・3年)

 

◆講義では、現段階の技術について伺うことができたが、その技術への取り組み自体が、「知能」「意識」「感情」の解明といった根源的な問いに対する解答へのアプローチの一つとして、位置付けられていることは新鮮な発見だった。まさしく「学際的」なテーマの中で重要なテーマの一つだと思われる。先生も最後におっしゃっていたように、そのことを社会が認識した上で、横断的な、様々な角度からの議論がこれからより重要になってくるだろう。(工学部・機械工学科3年)

 

◆今回の講義も非常に考えさせられる、興味深いものだった。國吉先生の話の中盤くらいまでは、機械が人間のプログラムしたことしかできない以上、機械が心を持つことはないのでは...と思っていた。しかし、カオス結合系でシミュレートされた胎児の動く様子を見ていると、まるでその胎児が心をもって動いているように見え、人間ももしかしたら心をもっているように見えて実はAと入力されたらBと返す、というプログラムを大量に有しているだけなんじゃないか、そうだとしたらロボットも人間と同じようにまるで心をもっているかのように振舞うのではないか、と思った。(工学部・建築学科3年)

 

◆行動パターンは身体性と環境の制約によって構成されていくという話が新鮮で、特に積み木掃除ロボットの話が分かりやすく面白かった。一方、これがどうやって心に影響していくのか(付随して形成されていく脳神経系と心との関係)が理解しきれなかった。心とは一体何かという話や、感情とどう結びつくのかという話など、時間の関係で聞けなかったことがたくさんあると思うので引き続きお話を聞いてみたいと思う。最後の方のスライドにあった、人文と科学の融合の話は興味深かった。人工知能の発展によって人間のあり方を今まで以上に深く考えなければならない時代が来ている中で、これまで培ってきた学問を総動員して考えるのはとても素敵な話だと思った。(経済学部・経済学科3年)