六反田 豊

(人文社会系研究科 朝鮮中世近世史)

「血縁と姓氏―近世朝鮮の家族制度」


予習文献

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講義後情報コーナー

履修者のレスポンス抜粋

私たちがつながりを求めるとき、基礎にあるのは家族だ。その家族について、姓氏の観点から考えた。朝鮮と日本との対比をする中で興味深かったのは、近世朝鮮では同姓同本の氏族は同じ始祖を持つ集団として強いつながりがあったということだ。日本でも、ある苗字が特定の地域に多く存在することはあるが、多くの人は「家」単位のつながりの中で生きている。対して同じ漢字圏の韓国では1999年まで同姓同本の考え方が根付いていたことは驚きだった。植民地制度のもと、創氏改名がなされても崩れることはなく戦後も引き継がれていることが、氏族というものの存在の大きさを示す。また、夫婦間の苗字については、日本では、妻が夫の苗字に変えることが多い一方で韓国では妻はあくまでも夫の一族には属しないとのことで別姓になっている。日本でも夫婦別姓の導入を求める声が高まっているが、つながりの捉え方が違うだけで韓国では当然に夫婦別姓が通っていることも一つ参考になった。(法学部 3年)

 

日本の苗字の種類が30万種類以上もあるが、韓国では、280種類程度で、人口に比べて、きわめて少なく、キムやパクの苗字だけで4割を占める。とくにキムは5人に1人の割合で存在するということは前韓国の友人から聞いたことがあるが、本貫については初耳であった。氏族・本貫をめくる地縁的な繋がりについて、発祥の地名と姓とを組み合わせを持った本貫について、金海金氏(伽耶初代王수로왕(首露王)の子孫で人口比率9.0%)、慶州金氏、全州李氏、慶州李氏などがあり、こちらは日本の苗字と比較して地縁的な繋がりがより明確だと思った。例えば、友人に宜野座という苗字の方がいるが、その友人は沖縄出身で同じ村の人の苗字からきていると前に聞いた。そういった地名を指し示す珍しい苗字に対応するものがある意味本貫と同じ地縁的なニュアンスを帯びるようにも感じた。また、地縁的な結束を持たない外国人の場合についても考え調べた結果、帰化した外国人でも本貫を登録する必要があり、そちらを「創姓創本」に基づいて作成するときに、また本貫は韓国国内の現住地としたり、「泰国(タイ)」「モンゴル」など出身国名が受理された事例もあるらしく、外国出身ながら改名申請者自身が家門の始祖となることも趣深いと思った。(文学部 3年)